短期金融市場セミナー

現先市場

現先市場の概略

  • 現先取引とは「売買の目的たる債券等と同種、同量の債券等を将来の所定期日に所定の価額で買い戻すことまたは売り戻すことを内容とする特約付の債券等の売買」を指す。戦後の債券市場再開に伴って証券会社が保有する債券在庫が膨らんでいく中、資金繰りのために保有債券を買い戻し条件付きで売買する動きが広まり、現先市場は自然と拡大していった。
  • 新現先取引は、円の国際化を推進する上で、従来の現先取引をグローバル・スタンダード化させるという観点のもと、従来の現先取引に以下のような改正を加え、経過措置を設けた上で2002年4月より本格導入された。

    ①ヘアカット、マージンコール及びリプライシング等のリスクコントロール条項の追加
    ②サブスティテューションの適用による取引利便性の向上
    ③一括清算条項の導入による取引安全性の向上
    ④個別取引契約書の廃止
    ⑤海外レポ取引と同様の手法である利含み現先方式の導入、期間制限の廃止
  • 国債取引においては、有価証券取引税(1999年3月31日廃止)の課税回避の観点から主流となっていた債券貸借取引から新現先方式への移行が期待されていたが、実際には、新現先への移行は事実上ほとんど進んでいない。理由としては様々な負担(システム開発のコスト、与信の管理など)が重いために低金利下で移行するインセンティブが働かないことや、契約の問題などが挙げられる。日本銀行では2002年11月に短国現先オペおよび国債借入オペに代えて、国債を対象とする新現先方式によるオペを導入したものの、市場取引においては従来のレポ取引(現金担保付貸借取引)が現在まで主流となっている。
  • 2014年11月に日証協が発表した国債取引の決済期間の短縮(T+1)化に向けたグランドデザインでは、新たに整備する銘柄後決め方式GCレポ(T+0)取引については、新現先取引により整備することとされている。銘柄後決め方式GCレポ以外の取引についても、新現先取引への一本化を目指すこととされている。
  • また、新現先の基本契約書では、債券以外に国内CP、海外CD、海外CP及び外国貸付債権信託受益証券といった商品が取り扱えるようになっているが、現状ではリスク・コントロール手法及び取引対象債券等の差替えを利用しない旨の規定を「『債券等の現先取引に関する基本契約書』付属覚書」に盛り込む方法等をとることによって、ほぼ従来の現先取引と変わらないように行っている先が殆どである。
◆法的性格 売買の目的たる債券等と同種、同量の債券等を将来の所定期日(所定の方法により決定される期日を含む)に所定の価額(所定の計算方法により算出される価額を含む)で買い戻すことまたは売り戻すことを内容とする特約付の債券等の売買をいう。
◆取引種類取引期間中の利息については、下記の二種類の取扱い方がある。
[通常の現先取引]買い手が債券に係る利息を売却代金の前払いとの認識で受取り、売り戻し時には現先取引のキャッシュフローから利息相当額を差し引いて受け渡しをする取引。現先期間中に利払いがある場合、エンド単価が変わってくるなどの特徴がある。
[利含み現先取引]現先レポに係るキャッシュフローと債券に係わる利息の相当額の受払いを別立てにすることで、現先レポのキャッシュフローに影響を与えない取引。利金については、現状の債券貸借取引と同様の取扱いといえる。なお、利含み現先取引を行うに当たっては別途合意書の取り交わしを必要とする。
◆市場参加者オープン市場であり、取引参加者は金融機関に限定されていない。

現先取引市場の取引要領

[取引対象債券] 利付国債や国庫短期証券、CPなどが取引の中心である。
[取引金額単位] 特に制限はないが、通常は1億円以上の取引が多い。
[取引期間] 特になし
[決済方法] 国債の受渡しや資金の授受は、通常は日銀ネットの国債DVP決済システムを使って行い、決済の同時履行を確保する。一般債については、2006年1月10日より稼動した㈱証券保管振替機構の一般債振替制度(DVP)を用いる。
[清算機関の利用] 日本証券クリアリング機構(JSCC)参加者同士が国債の受渡しを行う場合、特段の合意が無ければJSCCに債務引受される。JSCCで参加者同士の決済を集約し、ネッティングすることで、決済件数及び決済量が削減される。また、カウンターパーティーリスクの削減等、種々のメリットを享受できる。
[スタート売買単価(通常の現先取引)] スタート売買単価=(約定時点の取引対象債券等の時価+スタート取引受渡日における経過利子)÷(1+売買金額算出比率)-スタート取引受渡日における経過利子
スタート売買金額=取引数量×スタート売買単価+取引数量×スタート取引受渡日における経過利子
[スタート売買単価(利含み現先取引)] スタート利含み売買単価=約定時点の取引対象債券等の利含み時価÷(1+売買金額算出比率)
スタート売買金額=取引数量×スタート利含み売買単価
[エンド売買単価(通常の現先取引)] ①取引期間中に取引対象債券等の収益金支払日が含まれない場合
エンド売買単価=(スタート売買単価+スタート取引受渡日における経過利子)+現先レート×(スタート売買単価×約定期間+スタート取引受渡日時点の経過利子×約定期間)÷365-エンド取引受渡日における経過利子
②取引期間中に取引対象債券等の収益金支払日が含まれる場合
エンド売買単価=(スタート売買単価+スタート取引受渡日における経過利子)+現先レート×(スタート売買単価×約定期間+スタート取引受渡日における経過利子×収益金が支払われる日までの期間)÷365-エンド取引受渡日における経過利子-収益金が支払われる日に支払われる額面100%当たりの収益金、ただし収益金が支払われる日までの期間とは、スタート取引受渡日(当日を含まない)から収益金が支払われる日(当日を含む)までの期間中の実日数をいう。
エンド売買金額=取引数量×エンド売買単価+取引数量×エンド取引受渡日における経過利子
[エンド売買単価(利含み現先取引)] エンド利含み売買単価=スタート利含み売買単価+現先レート×スタート利含み売買単価×約定期間÷365
エンド売買金額=取引数量×エンド利含み売買単価
[担保] 担保とは、担保金及び担保証券のことをいい、担保証券の価値の算出のために担保掛目が用いられる。担保掛目については、基本契約書付属覚書では「個別契約で別段の合意がない場合は100%とする」とされている。
[債券の時価] ①売買参考統計値採用銘柄
個別取引約定日の前営業日に、日本証券業協会が発表する「売買参考統計値(平均値)」の「単利利回り」を用いて、この利回りに基づいて取引実行日を基準として算出した価格(小数点以下第3位未満切り捨て)に、取引実行日までの経過利子(額面100円当たり、小数点以下第7位未満切り捨て)を加えた価格とする。
②売買参考統計値採用銘柄以外の債券
個別取引約定日の前営業日の午後3時における当該銘柄の市場における気配(利回り)に基づいて合理的に計算され、両当事者が合意した価格とする。
[個別取引与信額] 取引期間において、任意の時点をエンド日と仮定してのエンド売買金額に、現先レート・利息相当額を加えた額と当該時点の取引債券の時価との差額。
[純与信額] 取引当事者間において、双方の個別取引与信額合計から差し入れ担保金を減じた額を比べ、一方当事者の差引額が他方当事者の差引額を超過している場合をいう。
[マージン・コール] 一方取引当事者が他方取引当事者に対して純与信額を有していた場合、少なくとも純与信額と同額または同価値の担保を差し入れるよう要求することができる。貸借取引が個別取引ごとに担保金の調整を行うのに対し、現先取引は取引当事者間のすべての取引の合計で調整する。また、貸借取引がマージン・コール通知日の翌日に決済を行うのに対し、現先取引はマージン・コール通知日当日に決済を行う。
[リプライシング] 取引期間中に当該個別取引を一旦終了し、新たなスタート売買単価を用いて、終了前の取引と同条件の取引を新たに締結することにより、個別取引与信額を調整する。与信額の調整の手法として、個別取引を対象とすることや実行時に双方の合意が必要であることなどがマージン・コールと異なる。
[サブスティテューション] 取引期間中に、売り手が買い手に取引対象債券の時価総額以上の別の債券を引き渡す代わりに、それまで渡していた取引対象債券と同種・同量の債券を受け取る。この手法により担保金の移動を行うことなく、銘柄を変更することで担保価値を維持することができる。長期の玉の固定を避けることができるためターム物取引に有効である。
[オープン・エンド取引] 取引の当初、つまり個別契約締結時には取引決済日(エンド日)を定めないで、その後に、取引当事者のいずれかが取引決済日を指定・通知することで、当該日に取引を終了する。(「利含み現先取引」のみ適用)この取引手法については今後への期待はあるが、現状においては普及するまでに至っていない。
◆契約書類 現先取引を開始する際に必要とされる契約書類は、以下の通りである。
①債券等の現先取引に関する基本契約書
債券現先取引において、受渡代金の計算方法なども含めた、基本的な事項を定めたもの。
②「債券等の現先取引に関する基本契約書」に係る合意書
基本契約書の内容に加え、利含み現先取引を行うために必要な事項を定めたもの。
③「債券等の現先取引に関する基本契約書」付属覚書
端数処理の方法、時価の査定方法等、実務上の細部に関する取り決めが記載されたもの。
◆取引の形態 当社が取扱いを行っている取引の形態は「ワンタッチスルー・ブラインド方式」である。「ワンタッチスルー・ブラインド方式」は当社が取引当事者として、売り手または買い手となり仲介する方式であり、売買契約の締結および受渡決済は、当社と当該取引先との間で行う。
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