『金融市場は謎だらけ 』
倉 都 康 行 著
B6版 206ページ
価格(本体1,400円+税)
ISBN 4-8222-4281-1
日経BP社発行
2002年5月20日発行

著者の紹介

RPテック株式会社代表取締役、株式会社フィスコ取締役、中央大学経済研究科大学院客員教授
東京大学経済学部卒業、東京銀行(現東京三菱銀行)の資本市場部、ロンドン現地法人などの勤務の後、バンカース・トラスト、チェース・マンハッタンの資本市場部門責任者を歴任。チェース証券会社取締役東京支店長を務めた後、2001年にアール・ピー・テック社を設立。日本金融学会会員、日本証券経済学会会員、預金保険機構買取審査会委員。著書に『相場を科学する』など。

書籍内容(日経BP 書籍の概要 より)

日本金融マーケットの最重要問題とは何か。それは不良債権などではない。これまでの金融取引に「値段」が付いてなかったことが問題なのだ。企業の信用リスクに応じた貸出金利(値段)が付く仕組みがなければ、銀行業はそもそもビジネスとして成り立たない。金融の最先端に身を置いた著者が抉る日本市場の非常識。

書評(朝日新聞 6月9日より )
評者・池尾和人(慶大教授)

本書のタイトルは、販売促進に意を用いすぎたもので、内容を必ずしも正確に表しているとはいえない。実際の内容となっているのは、日本の金融市場に「本当に欠けているもの」は何かを究明し、日本の金融の再生のために不可欠な条件を指摘することである。そして、本書の指摘は、きわめて本質的で、当を得ていると思う。

日本の金融システムは、九〇年代以降、ずっと機能不全に陥っているとみなされてきた。しかし、いかなる機能が十全に発揮されていないのかについては、実は正しく理解されてはいないのではないか。理解不足の背景には、わが国ではかつて資金不足で、資金を量的に確保すること自体が優先的な課題であった時期が長く続いたために、金融の役割を量の確保という観点からのみ見がちだという悪弊が影響している。
実際には、いまの日本経済は「金余り」の状況にあり、資金の絶対的な量的不足が生じているわけではない。したがって、問題は「価格」のはずである。適正な価格がつけば、量はそれに付随してくるはずだという意味で第二義的なものに過ぎない。もし必要なところに十分な資金が回っていないとしたら、それは適正な価格を見いだすことに失敗しているからだ。
このように考えると、日本の金融の機能不全は、「価格概念の不在」、より詳しくは日本の金融関係者の「信用リスクの価格測定」に関(かか)わる能力の乏しさ、に起因していることが分かる。これが、本書の基本メッセージである。日本の金融をめぐる様々な問題の根底には、適正価格を見極めるということへの問題意識の薄さが、共通した原因としてある。不良債権を積み上げてしまったのも、金融技術を磨くことができないのも、それゆえの現象にほかならないことが、本書では繰り返し語られている。
もちろん厳格な価格測定を行うことは、きわめて困難な課題である。しかし、困難だからといって、思考停止をしてしまうようであれば、プロとは言えない。そして、プロになるのでない限り、金融機関に存在意義がないことは、本書が力説するまでもないことであろう。
目 次
第1部 価格を忘れたマーケット(不良債権問題の横糸;株のリスクと信用リスク ほか)
第2部 哲学を忘れた金融技術(集中投資と分散投資;変動金利の意味 ほか)
第3部 収益機会を忘れたビジネス・モデル(デリバティブズの教訓;価格形成のマーケット・モデル ほか)
第4部 日本の金融はプロになれるのか(中南米から不動産へ;為替に戻る機関投資家 ほか)
はじめに
第1部 価格を忘れたマーケット
不良債権問題の横糸
株のリスクと信用リスク
格付けと金利
リスク・プレミアム
限界的な社債市場
振り回される日本の投資家
価格と会計制度
第2部 哲学を忘れた金融技術
集中投資と分散投資
変動金利の意味
不良債権と優良債権
金融工学の社会観
複雑系の市場
リスク管理のあり方
価格帯のブラックホール
第3部 収益機会を忘れたビジネス・モデル
デリバティブズの教訓
価格形成のマーケット・モデル
信用リスクの分配とヘッジ
トレーディングの収益性
エンロン事件の教訓
信用は保険である
資本の論理
第4部 日本の金融はプロになれるのか
中南米から不動産へ
為替に戻る機関投資家
羹に懲りて国債運用
引当金と突然死
公的資金と市場時価
降水確率と倒産確立
あとがきにかえて
時価の育成
以 上


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